レポート

2011.06.28 ヨーゼフ・ボイス「1984年6月2日 東京芸術大学での対話集会」

会場の地下にはヨーゼフ・ボイスが1984年に来日した際、東京芸術大学で行った300 人との公開対話集会の映像が流れています。この集会の中でボイスは、日本の芸大学生・教授の質問に真摯に受け答えながら、“一人一人が主体性と創造性を持って、自分で考え、決定し、行動することで社会を作り上げていくべきだ”という「社会彫刻」の信念を力強く主張し、そのような意味でこそ誰もが芸術家でなり得るという自身の概念を訴えかけています。また、この記録映像をディレクションしたのは、展示参加アーティストの畠山直哉さんです。

アートバーゼルの期間を終え、静かな日常を取り戻しつつある会場には、この90分近くに及ぶ映像を最初から最後まで見たいと再び足を運んでくれる人が多くいました。ドイツの緑の党の結成などにも関わっており、既存の芸術概念以上の活動を目指したボイスの言葉には、人々が現在の社会を考える上で今なおリアリティを持って受け止められ、来場者の中には映像の前で議論を始める人もいました。

(レポーター:丸山美佳)